もう、我慢すんのやめた
「だって……、私だったら絶対信じるのに。私、佐倉と同じ中学なら良かった」
「……俺も、松永にもっと早く会いたかった」
そこにさっきまでの佐倉は、もういなくて。フワッと優しく笑う佐倉に、私の涙は止まらない。
「なんで、笑ってんのさ〜……!」
「フッ、逆に泣きすぎ」
「今は?今はもうストーカーされてないの?」
「高校入ってからも、ずっとそんな感じだった。兄貴はすげぇ心配して転校進めて来たけど、俺はしたくなかった。
俺んち、小さい頃に父親を事故で亡くして母親と兄貴と3人なんだよ。俺も夜間にバイトしてるけど、ほぼ兄貴の稼ぎに頼りっぱなしだし。転校したらまた金かかるしさ……。制服とかジャージとか?」
「……そっか」
「でも、転校してくるちょっと前に、家の前で兄貴がストーカー女と遭遇したっぽくて。バイト終わって帰ったら"警察呼んで引渡した"って言われた。
そのとき、俺への接近禁止命令が出されて、やっと目が覚めたのか……それっきり、パタリとなくなった」
「だから私がお見舞いに行った日、佐倉のお兄ちゃん……」
「兄貴は1番そばで見てたから。咄嗟に俺を守ろうとしてくれたんだと思う。……松永は悪くねぇのに、悪かった」