おじさんは予防線にはなりません
ぱっと笑って歩き出した宗正さんについて歩く。
宗正さんは浴衣の私が焦らないでいいようにゆっくり歩いてくれるし、人にぶつかりそうになるとさりげなくガードしてくれた。
そういうのは慣れているなって思う。

屋台を見ながら進んでいき、適当に空いた場所でバッグからシートを出して引いてくれた。

「座ろっか」

「はい」

並んで座ったけれど、急になにを話していいのか困る。

「……宗正さんは浴衣じゃないんですね」

一緒に浴衣を見に行ったとき、宗正さんも紳士用の浴衣を見ていたから今日は浴衣だとばかり思っていた。
けれど実際はボーダーのVネックカットソーに黒のスキニー、それに白の長袖コットンシャツを腕まくりしている。

「……大河」

「はい?」

ぶーっと宗正さんが唇を尖らせ、首を傾げてしまう。
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