おじさんは予防線にはなりません
【おはよう】
【今日は天気良さそうでよかったな】

【浴衣の着付け、手に余るようなら言え。
妻に頼んでやるから】

【あと、今日はしっかり宗正におごらせろ。
あいつは君と違って正社員なんだから】

【熱中症には気をつけろよ。
楽しんでこい】

眼鏡のおじさんの、スタンプ混じりのメッセージにはぁっ、小さくため息が漏れる。
会社で私と宗正さんが花火大会の相談をしているのを池松さんは聞いていたのだ。

「おう。
若い人間は羨ましいな。
おじさんは休みの日、疲れて寝ていたいぞ」

パインアメで口をもごもごさせながら言われたって、少しも笑えない。
そうやって私に予防線を張っているのがわかっているからこそ。

「池松係長の年になると、花火大会の人混みはつらそうですもんね」
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