おじさんは予防線にはなりません
池松さんだけじゃない、会社の誰もが私と宗正さんが付き合っているって信じていた。

「詩乃、お待たせ。
あー、また池松係長が詩乃にちょっかいだしてるー」

ふざけるように宗正さんがむくれ、池松さんは苦笑いしている。

「無駄な心配するより、羽坂を大事にしてやれ?」

「それこそ心配されなくてもしてますよ」

ふたりのあいだを静かに、緊迫した空気が流れた。

「ねー、詩乃?」

宗正さんが笑うと一気に空気が緩んだ。
さっきのは……私の勘違い?

「はい、宗正さんは優しいです」

「そうか。
ならいい」

私も笑って答える。
池松さんも満足そうに頷いた。
< 146 / 310 >

この作品をシェア

pagetop