おじさんは予防線にはなりません
「詩乃」

改札を出ると宗正さんが私に手を振る。

いつもそう。
絶対、私より早く来ている。

しかし、黒パンツと白のVネックTシャツにグレーのジレを羽織り、大好きなご主人様が来た! って顔で笑われると、眩しすぎて困る。

「待った?」

「ううん、全然。
いこっか」

さりげなく私を促して宗正さんは歩き出した。
必ず私を歩道側にしてくれるし、歩く早さはゆっくり目で合わせてくれている。


映画館ではすでに、宗正さんはチケットを買ってあった。

「あの、お金」

バッグから財布を出そうとしたけれど、宗正さんに止められる。
< 150 / 310 >

この作品をシェア

pagetop