おじさんは予防線にはなりません
「いいよ。
代わりにランチ、おごって?」

「はい」

こういうやり方は凄くスマートだ。
宗正さんがモテる理由がよくわかる。
なのにどうして……私は宗正さんを好きになれないのだろう。

そのジレンマはいつも私を悩ませる。

人として、友達として宗正さんに好意を抱いているが、それが恋に変わる様子はない。
宗正さんを好きになればすべてが丸く収まるし、楽になれるのもわかっている。
それでも。

――どうしても宗正さんに恋という感情をもてない。

「ポップコーンとジュースは詩乃が買ってね。
代わりにあとでお茶をおごるから」

「うん」

なんでそうなるのかは理解しているから、反論したりしない。
ポップコーンと私はウーロン茶、宗正さんはコーラを買い、シアターの中に入る。
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