おじさんは予防線にはなりません
席に着いてそんなに待たないうちに電気が落ち、予告がはじまった。
私の好きな絵本が原作の映画があるみたいだし、上映がはじまったら宗正さんを誘ってみようかな。

映画は学生結婚したけど早くに亡くなった奥さんをいまでも思い続けるおじさん教授と、おじさん教授に想いを寄せ、絶対に報われないとわかっていながらひたむきにお世話をする女子大生の話だった。

おじさん教授と女子大生の関係は池松さんと私の関係に似ている。
池松さんも奥さんを深く愛しているし、私も池松さんが振り向くことがないとわかっていながら慕っている。

――ただ映画と違うのは。

あちらはおじさん大学教授と女子大生が結ばれてハッピーエンドなのに対し、私には永遠にハッピーエンドはこないということだ。

仮に池松さんが私の想いに応えてくれたとしてもそれは不倫になるし、離婚してくれたとしても奥さんを犠牲にして手に入れたものがハッピーエンドだとは思えない。

たとえあんな奥さんでも。
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