おじさんは予防線にはなりません
キーンコーン……。

始業のチャイムが鳴りはじめ、張り詰めた空気は緩んでいく。

「ほら、朝礼はじめるぞー」

池松さんの声でいつものように並びながらも、みんなちらちらと私と宗正さんの左手薬指を確認していた。


仕事中、なにか言いたげな視線が無くならない。
特に布浦さんを筆頭に数人からは突き刺さる鋭い視線が送られる。

いやーな予感がしながらシュレッダーのゴミを片づけていると……突然、壁ドンされた。

「……ねえ。
どういうこと?」

間近になった布浦さんの耳元で、ゴールドのチェーンタイプピアスがぶらぶらと揺れる。

「どうと言われましても……」

この指環は宗正さんが私を繋ぎ止めようとする枷のようなものだ。
けれどそんな説明、できるはずがない。
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