おじさんは予防線にはなりません
第7章 旅行
夏の盛りの眩しい季節だっていうのに、私の心は……どんよりと曇り空。
自分のはっきりしない態度のせいだっていうのはわかっているけど。

「盆休みは詩乃、どうするの?」

「お盆休み……?」

私が首を傾げると、大河はおかしそうに笑ってハイボールをくいっと飲んだ。

大河――宗正さんとの距離は若干、縮んだ。

あの日、布浦さんに絡まれていたのを助けてくれた日、お願いされたご褒美のせいかもしれない。

あれはほんとにもう、……恥ずかしかったけど。

でも、手を繋いで歩くくらいは平気になった。
たまに部屋に泊まることもある。

「オレ、お盆ずらして少し遅くに休みを取るんだけど。
できたら詩乃と泊まりで旅行に行きたいなー……なんて」

なんでもないように大好物のポテトをぱくぱく食べている大河だけど、実はものすごく勇気を出したんだってわかっている。
結構飲んでもあまり顔色の変わらない彼の耳が赤くなっているし。
< 177 / 310 >

この作品をシェア

pagetop