おじさんは予防線にはなりません
どういう仕組みになっているのか知らないけど、私が大河と同じ日に休みを取ったって、あっという間に広まった。

「これ。
値札はずし、お願いできる?」

ドン! と空いている隣の机に布浦さんが置いたパッキンからはベルトがはみ出ている。

「今日中に返さなきゃいけないんだけど、私、得意先と約束があるの。
じゃ、お願いね」

「……はい」

椅子に座る私をなにか言いたげに布浦さんは見下ろしていたが、すぐにふん、と顔を背け、かつかつとヒールの音も荒く去っていった。

……前回のことはもう忘れたのかな?

前もこうやって私に仕事を押しつけ、大河にさりげなーく釘を刺されたのに。
でもこうやって、誰かを好きだって気持ちを素直にアピールできる布浦さんが少し羨ましくもある。

……さっさと事務処理終わらせて、これ、片づけないとね。
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