おじさんは予防線にはなりません
月末月初の忙しいときじゃなくて、それだけが救いだと思う。
あと、大河が外回りに出ていていないっていうのも。


「羽坂、手伝うか」

もくもくとひとり、ベルトの札はずしをしていたら、隣に誰かが座った。
視線を向けた先ではいつものように、椅子に後ろ向きで池松さんが座っている。

「いいんですか?」

「手伝わないとそれ、終わんねーだろうが」

くいっと曲げた人差し指で眼鏡をあげ、池松さんは私と一緒に札はずしをはじめた。

「その、最近はどうだ?」

「最近、ですか?」

話しながらも手は休みなく動かしていく。

「まあ……あれだろうが」

目の前のパッキンケースに池松さんは苦笑いした。
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