おじさんは予防線にはなりません
「そうですね、そっちは相変わらずですけど」

私も苦笑いしつつ、新しいベルトを手に取る。

大河はペアリングで嫌がらせがやむのを狙っていたみたいだけど、じみーに続いていた。
ここまで酷いのはひさしぶりだけど。

「他は大丈夫です。
……慣れたっていうのありますけど」

マルタカのレディースファッション部勤務は最長記録を更新中だ。
ここの独特の空気にも慣れてきた。

「そうか」

ニヤリ、八重歯を見せて池松さんが笑う。
きっと池松さんにも私が言いたいことはわかっているんだろう。

「羽坂はよく頑張ってるもんな。
えらい、えらい」

池松さんの手が伸びてきて、私の髪をわしゃわしゃと撫でる。
上目で見上げると、サーモントブローの奥で目があった。

「ん?」
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