おじさんは予防線にはなりません
「……詩乃?」

私が腕の中から抜け出て、大河は怪訝そうな顔をした。

「大丈夫、だよ。
心配させてごめんね?」

無理に笑ってみせる。
大河も笑ってくれてほっとした。

「いいよ。
じゃあもう、寝ようか」

「あ、もう一回、お風呂入ってくる。
汗、かいちゃったから」

大河に嘘をついた。
ただいまはちょっとだけ、ひとりになりたい。

「わかった。
オレ、先に寝るね。
おやすみ」

「おやすみ」

私が部屋を出るとき、大河は笑っていた。
その無理な笑顔は自分がそうさせているんだという自覚はある。
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