おじさんは予防線にはなりません
ドン、池松さんが私の隣に腰を下ろす。

「ビールでいいか」

「ありがとう、ござい、ます」

差し出された瓶を、空いている自分のグラスで受けた。

「しかし、あれはなんだ?」

苦々しく顔をしかめて聞かれても、答えられない。
確かに彼女持ちのくせに女性にちやほやされているとか、普通だったら許されないだろう。
しかも、その彼女の前で。

……でも。
私は大河を責められない。


あの旅行から帰ってきて、大河とは微妙な距離ができた。
表面上はいままで通り、だけど前にみたいに、ガンガン攻めてこなくなった。
一歩だけだけど離れて私を見ている、そんな感じ。

きっと私が――大河に抱かれることができなかったから。

大河はもう、どんなに頑張ったって私が彼を好きになることはないって知っている。
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