おじさんは予防線にはなりません
てきぱきと私の荷物をまとめ、井村さんは池松さんに渡している。
無理矢理靴を履かされ、店を出た。

「なんれ池松さんは、大河が私の彼氏とか言うんれすか」

「だって、そうだろ」

エレベーターを待っている間も、いじけて池松さんに絡み続けた。

「大河は私の彼氏じゃないれす」

「……」

チン、エレベーターが到着し、一緒に乗り込む。
中はふたりっきりだった。

「私が好きなのは……」

じっと、顔を見上げる。
レンズ越しに一瞬だけ目のあった池松さんは、すぐにすーっと私から視線を逸らした。

それがさらに、私をムキにさせる。

そっと腕を伸ばして、その首に絡めた。
背伸びをして、薄い唇に自分の唇を重ねる。
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