おじさんは予防線にはなりません
戸を閉めるとはぁーっとため息が落ちた。

……ここ、池松さんの家なんだ。

なんで自分が、池松さんの家にいるのかわからない。
いやきっと昨晩、酔い潰れてしまって迷惑かけたというところか。

「……最悪」

服を脱ぎながら、ふと手が止まる。

「私、昨日、池松さんと……キス、した?」

自分からあの薄い唇に自分の唇を重ねたのはかろうじて覚えている。
思い出すとあまりにも大胆な行動に、顔から火を噴いた。

「でも、池松さん……」

そっと、自分の唇に触れてみる。
応えてくれたあれ、は夢だったんだろうか。

「とにかく。
これ以上、迷惑なんてかけられないから」

慌てて現実に戻り、シャワーを浴びる。
昨晩のことなど洗い流すかのように、ごしごし身体をこすった。
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