おじさんは予防線にはなりません
「シャワー、ありがとうございました……」

池松さんの出してくれた服は、奥さんのだと言っていたが私にぴったりだった。

「おう。
化粧もするだろ?
鏡台の上に適当に並べておいたから、使ってくれ」

「ありがとう、ございます……」

寝室の鏡台の上には、未使用の化粧品がいくつも並べてあった。

「これ、けっこうお高い奴だけどいいのかな……」

いいもなにもすっぴんで会社へ行くわけにはいかないし、仕方ない。
化粧品を借りてメイクを済ませる。
私が再び寝室から出る頃には、いい匂いが漂っていた。

「化粧品、ありがとうございました。
その、あれ……」

「ああ、いいんだ。
妻はいつも、買うだけ買って使わないから。
気に入ったのがあるなら、持って帰っていいぞ」

「はぁ……」
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