おじさんは予防線にはなりません
本人の了承なく持って帰っていいのだろうか。
いや、よくない。

「朝メシ、食うだろ」

「……はい」

勧められてダイニングの椅子に座る。
テーブルの上にはごはんにお味噌汁、それに焼き鮭と玉子焼き、ほうれん草のおひたしと、まるで旅館の朝ごはんのような食事が並んでいた。

「いただきます」

お味噌汁は出汁がよくきいていて、飲み過ぎた翌朝の身体に染みる。

「その。
……昨日」

「ああ。
住所聞く前に君が酔い潰れて寝落ちしてしまったから」

「でも、あの」

あの、キスは?

聞きたいけれど口からは出てこない。
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