おじさんは予防線にはなりません
「君が寝落ちしたから仕方なく、うちに連れてきた。
それだけ、だ」

真っ直ぐに池松さんが私を見つめる。
それ以上、なにもなかったんだと私に認めさせるように。

「……はい」

「うん」

私が頷き、池松さんもそれでいいんだと短く頷いた。
沈黙が辺りを支配する。
それに耐えられなくて、口を開いた。

「あの。
奥さん、は」

「さあな。
どっかの男のところにでも泊まってるんじゃないか」

なんでもないかのように池松さんはずっ、とお味噌汁を啜った。

「あ……。
すみま、せん」

「別に羽坂があやまるようなことじゃないから」

再び、沈黙が訪れる。
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