おじさんは予防線にはなりません
【まさか池松係長と一緒だなんてないよね】

【大丈夫だって信じてるけど】

【詩乃いま、どこにいるの?】

心配している大河へ、返信を打ちかけて指が止まる。

昨晩、私は池松さんの家に泊まった。
それだけならまだいい。
池松さんはなかったことにしようとしたけれど、キスしたのは事実だ。

そんなの――大河に説明できない。

「そろそろ出るぞ」

「あ、はい」

結局、返信はしないまま携帯を鞄にしまう。
玄関のドアノブに池松さんが手をかけたところで、反対側から開いた。

「たっだいまー」

ドアを開けた女性――世理さんは、朝だとは思えないほどハイテンションだ。
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