おじさんは予防線にはなりません
はぁっ、小さく池松さんの口からため息が落ちた。

「わかった。
手早くしてくれ」

池松さんが家の中へ戻っていくから、私も一緒に行く。
寝室ではごそごそと音がしていた。

「お待たせー。
これ、私が使わないので悪いんだけど。
よかったら使ってくれる?」

世理さんから渡された紙袋の中には、さっき私が使った化粧品と同じラインのものが山ほど詰まっていた。

「いえ、そんな!」

「いいの、いいの。
どうせ使わないし、それに和佳の彼女だったら……私のなんになるんだろ?
ねえ、和佳?」

「……知るか、そんなの」

はぁっ、再び池松さんの口からため息が落ちる。
彼は怒っているというよりも、完全にあきれていた。
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