おじさんは予防線にはなりません
「これはプライベートな質問だから、答えたくなければ答えなくていい。
……宗正と別れたのか」

僅かな間の間に、眼鏡の奥の瞳が数度揺れた。

「……はい」

付き合っていなかったのだから、正確には別れたわけじゃない。
けれど恋人ごっこを終わらせたのだから、別れたといっても間違いない。
それに、池松さんをはじめ周りの人間は、私たちが付き合っていると信じていたのだからなおさら。

「……俺のせいか」

黙って首を横に振る。

「でも俺が昨日、軽率に羽坂を家に泊めたりしたから……」

きっかけは池松さんでも、この関係に終止符を打ったのは私自身だ。
彼が責任を感じることはない。

「違うんです」

「羽坂?」
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