おじさんは予防線にはなりません
「はい。
私はもう、自分に嘘をつかないと決めたので」

「……なら、いい」

池松さんはカップに残っていたコーヒーを一気に飲み干した。



家に帰り、化粧品の入った引き出しを開ける。
中を漁ると奥の方から、ずっと前に買ったピアッサーが出てきた。

「私は私を変える」

自分の浅はかな考えが、大河を深く傷つけた。
もう自分に嘘はつかない。
真っ直ぐにただ、好きな人を想い続ける自分になる。

ピアッサーで耳を挟み、ボタンに指を添える。
一度、大きく深呼吸して思いっきり押した。

――バチン!

大きな音がした瞬間は痛くなかった。

「ほんとにこれでいいのかな……?」
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