おじさんは予防線にはなりません
「……羽坂は、優しいなー」

「優しくなんかないです。
池松さんが離婚の危機なら、あわよくばとか考えてるんですから」

「それでも。
ひとりでいるよりずっといい」

眼鏡の奥で、目が泣き出しそうに歪む。
その顔に、胸がきゅーっと締め付けられた。



夜、池松さんは個室のしゃぶしゃぶ店に連れてきてくれた。

「若い子には肉だろ」

池松さんはそう言って笑っているけれど。

「あの。
池松さんを励ますためなんで、池松さんの好きなお店でいいんですよ」

「俺が付き合わせてるんだからいいんだ」

池松さんがいいのなら、いいのかな……?
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