おじさんは予防線にはなりません
ご飯にお味噌汁、塩鯖と切り干し大根を煮たの、それに玉子焼き。

「いただきます」

ふたりとも、黙々と朝食を食べた。
どっちも言いだす機会をうかがっている。

「あの」

「なあ」

口を開いたのは、ふたり同時だった。

「あ、池松さん、お先にどうぞ」

「いや、羽坂が先に」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

こほん、小さく咳払いして椅子に座り直し、姿勢を正す。

「昨晩のことは一夜限りのあれだったってことで、忘れてください」

酔った勢い、心が弱って誰かに慰めてほしかったから、そう片付けてほしかった。
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