おじさんは予防線にはなりません
その日、定期検診に行ったら……世理さんが、いた。

「あれ?
羽坂さんもおめでた?」

〝も〟ということは、世理さんも妊娠している?

「あの彼と結婚したの?」

「いえ……」

なんとなく決まり悪く、言葉を濁してしまう。

「もしかして、和佳と?」

「……はい」

「そうなの!」

なぜか、ぱーっと世理さんは顔を輝かせた。
そんな彼女の隣には、寄り添うように渉さんが座っている。

「北平さん、診察室へどーぞー」

「あとで一緒にお茶しましょう?
じゃあ」

呼ばれた名前は池松じゃなかった。
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