おじさんは予防線にはなりません
「ふーん」

池松さんはそれ以上なにも言わなかったが、口元はなぜか嬉しそうに緩んでいた。



束の間の平和だったゴールデンウィークが終わると、日常が戻ってくる。

「オーストラリアに行ってきたの。
向こうは涼しくてよかったけど、日本は暑くて嫌ね。
これ、配っといて」

わざとらしくふーっと息を吐き出し、森迫(もりさこ)さんは紙袋を差し出した。

「はい」

森迫さんから受け取ったクッキーの箱を傍らに積む。

他にも数件、配っておいてくれとお菓子の箱を受け取っている。
シンガポール、ハワイ、北海道、沖縄などなど。
おみやげを配ることで私はここにいってきたのよと自慢したいんじゃないかと思うのは……考えすぎ、かな。

「おー、しばらくはおやつに困らなさそうだな」
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