おじさんは予防線にはなりません
ふらりとやってきた池松さんはお菓子の箱を手に取り、しげしげと見ている。

「こういうのは性格が出るよな。
気配り上手な奴は配るときを考えて個包装になってる奴にするし、なんも考えてない奴は……ほら」

差し出されたのは数少ない男性社員でしかも若手の、白沢さんが帰省して買ってきたカステラだった。

「これなんてわざわざ切らなきゃいけない」

「うわっ、面倒だな……」

「心の声、出てるぞ」

にやにやと池松さんに笑われて、頬が熱くなってくる。

「……すみません」

「別にかまわない。
俺だって面倒だって思うもん」

カステラの箱を元に戻し、ごそごそポケットを漁って池松さんは私の方へと拳を突き出した。

「まあこれでも食えや」
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