おじさんは予防線にはなりません
第3章 ……好き
ゴールデンウィークがあけると季節は夏めいてくる。
扱っている商品のほとんどが夏物に変わったから、よけいに強く感じるのかもしれないけど。

「ねえ!
カタログ送っといてって頼んだの、どうなってるの?」

つかつかと寄ってきた新本さんのスカートにはグリーンにどぎついオレンジの花が描かれており、目がチカチカする。

「昨日、メール便で出したので今日着くはずです。
あれでしたら、追跡しますけど」

見上げると、なぜか新本さんはうっと言葉を詰まらせた。

「……先方に着いたら教えて。
至急で連絡取りたいから」

「はい」

用は済んだのか、新本さんは勢いよく振り返って足早に立ち去ろうとしたけれども。

「おっと」

「邪魔!」
< 56 / 310 >

この作品をシェア

pagetop