おじさんは予防線にはなりません
それに池松さんは気にしていないようだし。
話題を変えられたこともあって、思考を切り替える。

「このプリント、三枚ワンセットにして封筒詰めしてくれないか」

持ってきたプリントを三種類に分け、見本のようにワンセット作って池松さんは封筒に詰めた。

「池松さんの頼みだったらなんでもしますよ」

「そう言ってくれるのはありがたい。
急がないから暇な時間を見つけてやってくれ。
お礼に今度、ステーキのうまい店へ昼メシに連れて行ってやるから」

くいっと池松さんが眼鏡をあげるから、思わずくすりと笑いが漏れる。

「はい。
楽しみにしています」

私に雑用を頼むのは当たり前なのに、こうやって気を遣ってくれるのは嬉しい。
しかも、照れながら。

池松さんが自分の仕事に戻ると、附箋に“カタログ到着確認。
新本さんに連絡”と書いてパソコンの隅に貼りつけた。
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