おじさんは予防線にはなりません
まだ残業している社員さんたちの邪魔にならないように気を遣いながら見て回るけど、なかなか決められなかった。

「なんだ、まだいたのか」

「ひっ」

突然、後ろから声をかけられてこわごわ振り返ると、池松さんが少し驚いた顔で立っていた。

「どうした?」

「……ちょっと驚いて」

……だって池松さん、気配を感じなかったんだもん。

「残業か?
ん?
でもなんで売り場?」

不思議そうに首を傾け、無意識なのかなにかを考えるように池松さんは後頭部を掻いた。

「……夏用の服を買おうと思って。
でも、なかなか決まらなくてですね……」

「ふーん」
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