おじさんは予防線にはなりません
私の頬を見た池松さんの顔が痛そうに歪む。
そんなに派手に腫れているんだろうか。

「ビンタくらいで大げさですよ」

「爪が当たったんじゃないか。
ミミズ腫れができてる。
痕になったら困るだろ」

そっと池松さんの手が私の頬にふれ、びくりと身体が震えてしまう。
そろそろと見上げると、レンズ越しに目のあった池松さんは手を引っ込めた。

「どうかしたのか?」

眼鏡の向こうから池松さんは不思議そうに見ているが、うまく言葉にできない。

「ちょっと、傷に、しみて」

「それは悪かった。
とにかくちょっと待ってろ。
病院、連れて行ってやるから」

「……はい」
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