おじさんは予防線にはなりません
池松さんがいなくなり、ずるずると背中が壁を滑ってその場に座り込んだ。

……なん、で。
どう、して。

どきどきと心臓が妙に自己主張をしている。
ビンタされていない方の頬も熱い。

池松さんにふれられるのが、怖かった。

まるでそこから……この感情を知られてしまいそうで。



すぐに池松さんは戻ってきた。

「具合でも悪いのか」

座り込んでいた私を見て、池松さんの眉根が寄った。

「……なんだか気が抜けて、腰が抜けちゃって」

できるだけ平気な顔を作って立ち上がろうとすると、池松さんが手を貸してくれる。

「……ありがとうございます」
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