おじさんは予防線にはなりません
そういう優しさがいまはつらかった。
気持ちを自覚したいまは。

「じゃあ、病院行くぞ」

「はい」

促されて歩き出す。
頬を腫らした私に何事かとみんなが振り返る。
池松さんはまるでかばうように、私の肩をそっと抱いてくれた。

「あの、……森迫さん、は」

私に池松さんがついているということは、森迫さんと話をする人はいないはず。

「ああ、本多さんに頼んできた。
一応、上司なんだからなんとかしてくれるだろ」

池松さんは嘯いているけれど……本当によかったんだろうか。
私の怪我よりも本多課長の、胃の状態の方が心配だ。


会社を出て二軒隣の医療系雑居ビルに連れて行ってくれた。
自分ではそれまで怪我の状態を確認していなかったが、改めて鏡を渡されて見ると、肉が軽く抉れていた。

「痕が残るかもしれませんね」
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