おじさんは予防線にはなりません
第4章 ハードル
頬の腫れは翌日には引いたが、傷はかさぶたになってしばらく目立っていた。

「ほんとに悪かったな」

私の傷を見るたび池松さんは申し訳なさそうで、反対にこっちが申し訳なくなる。

「その傷が原因で羽坂を振るような奴がいたら、俺がガツンと言ってやるからな」

「……そのときはお願いします」

にやりと池松さんが笑い、はぁっ、心の中で小さくため息をつく。

あの日、責任を取ると言った池松さんは、さらに続けてこう言ったのだ。

「森迫にはきちんと詫びを入れさせる。
それでも羽坂の気がすまないのなら、訴えてもいい。
外川部長や上の奴らがそれでなにか言ってきたら、俺がなんとかしてやる」

なにかを期待していたわけじゃない。
それでもがっかりしている自分を隠せない。
池松さんは真剣だけれど、言って欲しいのはそんなことではないのだ。
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