片想い ~ハツコイの雨~
はっきりと聞こえた陸斗の声。

ずっと前から知ってたのに、改めて聞いてナイフで刺されたみたいに胸が痛い。

希実ちゃんの答えは──。

「……っ、はい」



……分かってたよ。

それでも、もしかしたらって思ったんだ。

好きな人の失恋を望むなんて最低だって分かってても、諦められなかったんだ。

「今日は一緒に帰ろっか」

そんな会話が聞こえて私は無人の隣の教室に慌てて入って掃除用具入れの陰に隠れた。

影から覗いた時、二人が手を繋いでいるのを見て頬が濡れた。



その日は二人の声がずっと頭に残っていた。

*

次の日、朝家を出るとこんな日に限って陸斗も同じタイミングで家からでてきた。

「莉凪、おはよう」

「お、おはよ……」

昨日立ち聞きしてしまったから気まずいな……。

そんなことを考えながら隣を歩いていたら……。

「楠木と付き合うことになったんだ」

照れくさそうな顔をして陸斗が言った。
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