片想い ~ハツコイの雨~
会えばそう言われることは分かっていたから、会いたくなかったのに。

「……そうなんだ。おめでとう」

傷ついた心を隠してそういうのが精一杯だった。

「莉凪ーっ! 陸斗ーっ!」

ずっと後ろの方で私たちの名前を呼んだのは他でもない詩月だった。

詩月は陸斗からの報告を聞いて、心の底から喜んでいるようだった。

「おめでとう陸斗!」って全開の笑顔で。

その様子を見ていた私は、素直に喜べない自分が嫌になった。

*

終業式が終わって、いよいよみんなの待ちに待った夏休み。

私たち三人で遊ぶことが何度もあったけど、話題はやっぱり陸斗の彼女のことだった。
 

この気持ちが、いっそのこと全部なくなればいいのに……。

そうすれば、こんな辛い思いもしなくて済んだのに……。

そんな気持ちが溢れてしまった私は、近くの公園の大きな木の上で泣いた。

この場所は、私たち三人の思い出の場所。

昔から何度もこの木に登って三人で話した。

私たちの思い出が詰まっていた。
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