6月9日
ホームに電車が入り、幾人の人が乗り降りし、目の前を通り過ぎていく。

ここに来て、この光景を何度見たか。

一体、何を期待しているのだろう。

あんなに明るかった空が、既にオレンジ色から吸い込まれそうな漆黒へと変えていた。

ここに来ようとは言っても、時間までは約束していなかった。

そもそも別れているのだし、そこから一言も交わさずいくつもの時が流れている。

期待などするほうが馬鹿げている。

大きく溜め息をつき、またしてもホームに電車が入ることを告げるアナウンスが鳴った。

そういえば、二人が付き合ったのはこの時間に似た電車を降りた後だった。

ゆっくり立ち上がり、その場所へと足を進める。

その間に電車の乗り降りがされ、僕の横をすり抜けていく。

その場所で足を止め、目を閉じる。

「・・・そっか」

思わず、口に出してしまう。

いつも僕が待ち合わせ場所に遅れてきたとき、君がかけてくれた言葉。

きっと、僕はこの言葉を聞くために今日ここに来たのだろう。
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