正義が悪に負ける時
第3話
第3話
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「ごめん・・仕事で疲れてて・・・。」
初めて違和感を持ったのは、
フユミが夜を拒否した時だった。
もう一度僕に謝ったフユミは、
こちらに背を向ける形に寝返った。
「あんまり・・無理しないでね。」
「うん・・・。ありがとう。」
今思えば、背中越しの声は少し震えていた気がする。
この日以来、目に見えて夜の回数が減った。
そして・・フユミの見た目も少しずつ変わっていった。
最低限の化粧しかしていなかったはずなのに、
洗面台の棚には一つ、また一つと新しい化粧道具が増えていった。
「最近・・また一段と綺麗になったね。」
「無駄な抵抗かもしれないけど・・もう30歳になるんだから。」
「僕はそんな事気にならないよ。」
「アキラさんは良くても、少しでも綺麗に見られたいって思うから。」
この時のフユミの台詞は、
僕に対しての言葉だったのか。
その答えは、4回目の結婚記念日に渡すプレゼントを選んでいた仕事終わり、
ショッピングモールで偶然彼女の姿を見かけたことで出た。