正義が悪に負ける時
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計画には何の支障も不安材料も無かった。
唯一の鍵は、僕がどれだけ“役者”になりきれるか。
札幌で受けた電話。
相手はムコウジマ警察署の小西という男。
持てる力を全て振り絞り、
声を震わせた。
ショックを受けた旦那を演じきり電話を無事に終えた。
天候不良で飛行機が飛ばなかったのは何の影響も無い誤差。
ムコウジマ警察署まで法定速度を守りながら車を飛ばし、
着いてから玄関入り口まで全速力で走った。
待ち構えていたのは電話でも話した小西という刑事。
冗談抜きで自分は役者に向いているのではないか?と思うほど、自画自賛したくなる演技だった。
計画通りに亡骸と化したフユミを見て、
僕は笑いを堪えながら号泣した。
まんまと騙され、
背中をさすってくれた小西。
そんな彼から電話があったのは昨日の夜だった。