正義が悪に負ける時
次第にその顔が紅潮し、
震えながら目から涙が溢れる。
この取り乱しようからして、梶山はやっぱり不倫には気付いていなかったか・・。
「ご主人。」
とその時、さっきから俺任せにしていた隣の真田さんが口を開いた。
「・・・・・はい・・・・・。」
「このお茶あんまりにも美味しいんで、
お代わり頂けますか?」
!?!?!?!
この人は・・・!!!!
「真田さん!!」
“この状況で何言っちゃってくれるんですか!”と目で訴える。
「すぐ・・お持ちします・・。」
梶山は涙を拭い、たどたどしい足取りで台所へと向かった。
「お前も飲めよ。美味しいぞ。」
「・・・・ちゃんと頂きますよ。」
相変わらずこの人は・・・。
このお方の名は真田ダイゴさん。
俺が勤めるムコウジマ警察署 強行係において絶対的な存在のお方だ。
普段はヨレヨレのスーツを着た頼りない見た目だけど、
事件となると発揮される恐ろしく鋭い観察眼と、
突拍子も無い聞き込みから核心へと迫り、
時には犯人をも嫌らしく追い詰める。
そんな刑事ドラマのモデルになりそうな真田さんとコンビを組んでもう7年。
4年に1度訪れるらしい原因不明の下痢ピーピー時期も、付き合うのは2回目の経験だ。