正義が悪に負ける時
「その噂とやらが事実じゃなかったっていう意味で“話が違った”って事?
随分遅くに気付いたんですね。
本人にすぐ聞かなかったんですか?」
「勿論すぐに聞いたわよ。
“そんなお金は無い”って
何回も否定されても信じられなかった。
アキラの祖父母なんて貧しい農家みたいな仕事しかしてなかったくせに、
アキラには“貧乏”なんて雰囲気は一切無かった。
習い事もしてたし、
好きだった本もたくさん持ってたし。
きっと母親の遺産1億円があるから何不自由なく生活出来てたに違いないって。」
「・・・・・結局君は、金が目当てで梶山と付き合って結婚したのか。」
「びっくりよね。
ホントに遺産は無くて、大学まで通えたのも全部祖父母の稼ぎと貯金のおかげだったなんて。
もうあの人の良いところは、良い会社に就職して専業主婦させてくれた事だけ。」