正義が悪に負ける時
「聞きましたよ。
あなたがこのお店にどれだけ賭けてきたのか。
亡きご主人の想いも背負い、日本一のおもてなしを目指してどれ程の努力をしてきたのか。
だからこそ、
梶山アキラの脅しに屈したんでしょう?
息子さんが不倫をした女性の、
元旦那からの脅しに。」
「!?」
「この前私と一緒にこの店に来た女性刑事いましたよね?
優秀な彼女が突き止めてくれました。
梶山アキラの経歴にあった離婚歴。
その原因は奥さんの不倫だった。
そして奥さんが不倫をした中学時代の同級生の男。
その名字を知った時、あなたの名字と同じ事に気付いてくれた。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「警察の情報網を甘く見ない方がいい。
その当時息子さんが梶山に支払った慰謝料。
不倫して離婚に追いやらせたはずにしては少なすぎる額だった。
そして偶然にも、
日本料理店“一心”が立ち上がった時期と梶山が離婚した時期はほぼ同じ。」
「・・・・・・・・。」
「その当時、梶山に泣きついたんじゃないですか?
お店の開業資金に充てて、あなたにも息子さんの過ちを償うだけのお金が無かった。
結局梶山は、譲歩された僅かな慰謝料を受け取った。」