正義が悪に負ける時


「聞きましたよ。

あなたがこのお店にどれだけ賭けてきたのか。

亡きご主人の想いも背負い、日本一のおもてなしを目指してどれ程の努力をしてきたのか。

だからこそ、
梶山アキラの脅しに屈したんでしょう?

息子さんが不倫をした女性の、
元旦那からの脅しに。」


「!?」


「この前私と一緒にこの店に来た女性刑事いましたよね?

優秀な彼女が突き止めてくれました。

梶山アキラの経歴にあった離婚歴。
その原因は奥さんの不倫だった。

そして奥さんが不倫をした中学時代の同級生の男。

その名字を知った時、あなたの名字と同じ事に気付いてくれた。」


「・・・・・・・・・・・・・・。」



「警察の情報網を甘く見ない方がいい。

その当時息子さんが梶山に支払った慰謝料。

不倫して離婚に追いやらせたはずにしては少なすぎる額だった。

そして偶然にも、

日本料理店“一心”が立ち上がった時期と梶山が離婚した時期はほぼ同じ。」



「・・・・・・・・。」


「その当時、梶山に泣きついたんじゃないですか?

お店の開業資金に充てて、あなたにも息子さんの過ちを償うだけのお金が無かった。

結局梶山は、譲歩された僅かな慰謝料を受け取った。」


< 86 / 142 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop