SIMMETRY
 食事を終えた二人は――無論、支払いは割り勘で――送ることもなく別れ、それぞれ帰路に着く。


「こういうのって……有りなのかな」

 帰りの車中、優輝は複雑そうな笑顔を浮かべて呟いた。

「あんな女がいるとは、ね」


 優輝が初めて受け入れた女、結城棗。

 彼女も優輝と同じ、男や恋愛、結婚に興味を持たない女だったのだ。そして周囲から煽られているのも同様……否、あれだけの美貌を持つ女なだけに、寄ってくる男の数を考えれば、優輝より遥かに日々が煩わしいだろう。

 恋人……そして配偶者さえ出来れば、その全てがシャットアウトできる。しかし、相方となる人物が愛情を求めるような、ごく普通の者では意味が無い。

 そこで、自分と同じ性格の人間が必要だった。

 二人が交わした“契約”とは、表向きは恋人……いずれは夫婦を“演じ”、その実、他人同様に暮らしていくという、何とも夢の無い結婚生活を送ること。

 同居となった時のことなど、問題はまだ残されているが、二人は解放感に酔いしれていた。


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