SIMMETRY
 会話の大半は山岸夫婦に占められ――優輝や棗の口数が少ないのも去ることながら、山岸たちが饒舌過ぎる為、肝心の二人が話す機会はほぼ無かった。

 この後すぐに用事があるということで一足早く離脱したのは棗。
 待ち兼ねたとばかりに、優輝は山岸夫妻に問い詰める。

「で、勝手にどーゆーつもり?」

 あれだけの美女を紹介されれば、普通の男ならば舞い上がるだろう。しかし優輝は違う。現に、棗に対して興味を示す素振りは全く無かった。そこについては、山岸も今更突っ込みはしない。

「ん〜、お前に合うかと思ってさ。それとも――」

 山岸はヘラヘラと笑いながら、怯むこともなく返す。

「地元でお見合いするつもりだった?」

「う……」

 優輝は言葉を詰まらせた。見合いなど最初から考えてはいない。だからといって恋人を作るつもりもない。現状維持だけが彼の望みだ。


「っつーか……あの子、モテるだろ」

「だろうな」


 互いに紹介されたものの、まだ二人が付き合うなどという話にはなってない。それ以前に、その気の無い優輝の無愛想っ振りを見せつけただけに、流れる可能性が大だ。

「歳の差もあるしなぁ……俺が悩むまでもないか」

 自分が、彼女――結城棗の目に止まるような男ではないと確信し、優輝は胸を撫で下ろす。それを見て、山岸夫妻はニヤニヤ笑っていた。

「歳の差なんて関係無いわよぅ、たったの五つだし」

「お似合いだと思うんだがなぁ」


 優輝の性格を知りながら、二人はいつになく勧めていく。それが、優輝に恐怖のようなものを与えた。

「何だよ、お前ら」

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