SIMMETRY
 これまでに女を紹介した際、優輝が拒絶すれば「はいはい、そうですか」と溜め息をつくだけだった二人が、初めて違う反応を見せたのだ。


「あの子……何なの?」

 女に……恋愛に、結婚に全く興味が無い男に、自信を持って勧める二人。そして勧められる女、結城棗。
 彼女がどういう人物なのか、優輝の考えでは結論が出なかった。
 苦悩する優輝に、二人は説明を始める。

「あの子は――」



 後日、棗から優輝に――携帯番号は繭美から聞いたということで――連絡が入った。


『会えますか?』


 優輝は承諾し、夕食も兼ねてイタリア料理店で待ち合わせた。

 ファミリーレストランとは違い、規模は小さく静かで落ち着いた雰囲気の店内は、現地から取り寄せたインテリアにより高級感を醸し出している。
 その雰囲気や、それに反してリーズナブルなメニューを優輝は気に入って、かれこれ5〜6年は通っている。
 常連となって随分長いが、彼が女性を連れてきたのは初めてのこと。

「いらっしゃいませ」

 いつも笑顔の店長だが、今日は今までと違った笑顔で二人を迎えた。普段の細い目は大きく広げられ、立派な口髭のつり上がり方も最高到達点に達している。

「……なんですか」

 あからさまな違いに、流石に優輝でも突っ込んだ。が、店長は普段の笑顔に戻し、軽く首を横に振るだけだった。

「いいえ……二名様ですね。こちらに――」


 注文を済ませると、棗は単刀直入に切り出す。

「私、考えたんですけど……やっぱり貴方しかいないんじゃないか、って」

 未だ知り合いという関係でしかない二人だが、棗の発言はそれを超越している。
 そして、本来そういった話を嫌う優輝だが、どういう訳か彼も真剣な面持ちだ。

「う〜ん……でも、いいの? 心変わりしないとも言えないし」

「大丈夫です」

 棗は美しい笑顔と確信を以て、告白した。


「私と結婚して下さい」


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