SIMMETRY
 優輝は腕組みをしたまま唸っている。彼よりも、その話が聞こえていた他の客が反応していた。

 目を閉じ、黙って考えている優輝。本来ならば呆れて聞く耳も持たない筈だ。彼以外の普通の男でも、こうなったら動揺は隠せない筈だ。しかし――


「いきなり……ってのは変だ。しばらくは付き合うっていう形で」

 優輝まで乗り気になっている。しかも冷静に今後のことを考えていた。

「はい、それで構いません」


 口約束ながら、二人は婚約をした。会うのは二回目、互いのことを殆んど知らないという現状で……。

 満足そうな顔を見せ合う二人だが、そこに愛情が満ちている訳ではない。しかしこの二人の約束は、その辺の恋人同士のそれより、遥かに確定的な――ある種の“契約”。


「約束は一つ」

 優輝が人差し指を立てると、結城も解りきっているように頷く。


「互いに干渉しない」


 これから交際を始める者同士としては、あり得ない約束が交わされた。


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