だいすきなあなた

「じゃあ経済学部?」

「そうなるな」

まだどこの大学かは決めてないと言っていた安浦だったが、先のことを見据えていることは凄いこと。

私なんてまだ明日のこともわからない。

一カ月、半年、一年、十年先のことなんて検討もつかない。

「みんなすごいね」

そう零せば、

「夏帆だって凄いじゃん?」

花ちゃんは満面の笑みを向ける。

その言葉に首を傾けると、「そこ」と言って私のお腹を指した。

「ママになるじゃん」

ニカッと笑った裏表のない笑顔。
いつもこの笑顔に助けられる。

「でも…」

そう言いかけてやめた。

次の言葉が出てこない。

「何と言おうと夏帆は凄いの!私の自慢の友達!」

優しく、身体の負担にならないように抱きしめてくれた花ちゃんに涙が出た。

ここ最近の私は感情の波が激しく、よくイライラしたり無性に泣きたくなる時がある。

これがいわゆる、マタニティーブルーというやつなんだろう。

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