この溺愛にはワケがある!?
今日は月曜日。
だいたい週明けは休む間もないほどに忙しい。
待合は多くの人で溢れており、番号札のカウンターももうすでに三百を超えている。
それでも朝から面倒な案件はなく、皆、住民票や戸籍の交付がほとんどで窓口でもすんなりと捌くことが出来ていた。
そうして、少し人が減ってきた午後4時頃、その災厄はやって来た。
美織が穏やかな老婦人の住民票を交付し、次の人を呼ぼうと手元のボタンを押そうとしたその時、ふわっと巻き起こった風と共に誰かが目の前の椅子に腰かけた。
まず、胸元に目が行き明るめのブルーのネクタイを確認する。
次に机に置かれている組んだ指先を見た。
そしてその人物を確認すると、美織は誰が見てもわかるくらいのイヤな顔をした。
「こんにちは。少し構わないかな?」
ポンコツこと黒田隆政は、昨日あったことなど忘れたかのようにいい笑顔でそこに座っていた。
「………番号札はお持ちですか?」
美織は驚いてずれた眼鏡を指先で直しながら言う。
「番号札??」
「そこの機械で発券して、ここの窓口で用件を伺います」
「用件というか………話があるんたが」
「番号札をお取り下さい」
機械的な美織の対応に、少し面食らったのか隆政は大人しく発券機に向かった。
冷静に対応したつもりだが、内心美織の心臓は飛び出そうになっている。
(何の用!?昨日の文句?失礼なことを言った嫌がらせ?いやいや、失礼なことを言われたのは私だっ!どんな話があろうと、こちらは全然悪くない)
気を取り直してボタンを押すと、やれやれといった表情で、いつもくる弁護士事務所の柴田が美織の前に座る。
「どうも!これ、戸籍宜しく」
と、言いながら委任状と必要書類を出す。
「はい。わかりました」
すると、作業にかかる美織に近づいて柴田は声を抑えて話しかけて来た。
「ねぇ、あれ黒田造船の副社長だよね?どうしたの?知り合い?」
なるべく目立たなくしたつもりだが、見られていたのか。
確かにあんな悪目立ちする男、他人から注目されない訳がない。
「いいえ、全く関係ありませんよ。番号札をお持ちでなかったので、その説明をしていただけです」
「そう。いや……そうか。とうとう、加藤さんまで副社長の毒牙にと思っちゃったよ……」
そう言って笑う柴田の言葉に、美織の顔はひきつった。
「ないですから。何ですか、そんなにあの方素行が悪いんですか?」
「ま、ね。いや、やり手で仕事も良くできる男なんだけどねぇ。何だろうね、英雄色を好むってやつなのかな。そういうとこ、ほんと派手。さっきもね、そういう依頼が……あ、ごめん。聞かなかったことにして!」
柴田は目の前で手を合わせ、悪びれずににこっと笑った。
(弁護士には守秘義務があるはずだけど、こんなにぽろっと溢していいの?まぁ、案件の内容も、依頼人も言ってないのだから反してはいないのだろうけど)
美織は笑顔のままで、柴田には例え訴訟になっても頼むもんかと心に誓っていた。
だいたい週明けは休む間もないほどに忙しい。
待合は多くの人で溢れており、番号札のカウンターももうすでに三百を超えている。
それでも朝から面倒な案件はなく、皆、住民票や戸籍の交付がほとんどで窓口でもすんなりと捌くことが出来ていた。
そうして、少し人が減ってきた午後4時頃、その災厄はやって来た。
美織が穏やかな老婦人の住民票を交付し、次の人を呼ぼうと手元のボタンを押そうとしたその時、ふわっと巻き起こった風と共に誰かが目の前の椅子に腰かけた。
まず、胸元に目が行き明るめのブルーのネクタイを確認する。
次に机に置かれている組んだ指先を見た。
そしてその人物を確認すると、美織は誰が見てもわかるくらいのイヤな顔をした。
「こんにちは。少し構わないかな?」
ポンコツこと黒田隆政は、昨日あったことなど忘れたかのようにいい笑顔でそこに座っていた。
「………番号札はお持ちですか?」
美織は驚いてずれた眼鏡を指先で直しながら言う。
「番号札??」
「そこの機械で発券して、ここの窓口で用件を伺います」
「用件というか………話があるんたが」
「番号札をお取り下さい」
機械的な美織の対応に、少し面食らったのか隆政は大人しく発券機に向かった。
冷静に対応したつもりだが、内心美織の心臓は飛び出そうになっている。
(何の用!?昨日の文句?失礼なことを言った嫌がらせ?いやいや、失礼なことを言われたのは私だっ!どんな話があろうと、こちらは全然悪くない)
気を取り直してボタンを押すと、やれやれといった表情で、いつもくる弁護士事務所の柴田が美織の前に座る。
「どうも!これ、戸籍宜しく」
と、言いながら委任状と必要書類を出す。
「はい。わかりました」
すると、作業にかかる美織に近づいて柴田は声を抑えて話しかけて来た。
「ねぇ、あれ黒田造船の副社長だよね?どうしたの?知り合い?」
なるべく目立たなくしたつもりだが、見られていたのか。
確かにあんな悪目立ちする男、他人から注目されない訳がない。
「いいえ、全く関係ありませんよ。番号札をお持ちでなかったので、その説明をしていただけです」
「そう。いや……そうか。とうとう、加藤さんまで副社長の毒牙にと思っちゃったよ……」
そう言って笑う柴田の言葉に、美織の顔はひきつった。
「ないですから。何ですか、そんなにあの方素行が悪いんですか?」
「ま、ね。いや、やり手で仕事も良くできる男なんだけどねぇ。何だろうね、英雄色を好むってやつなのかな。そういうとこ、ほんと派手。さっきもね、そういう依頼が……あ、ごめん。聞かなかったことにして!」
柴田は目の前で手を合わせ、悪びれずににこっと笑った。
(弁護士には守秘義務があるはずだけど、こんなにぽろっと溢していいの?まぁ、案件の内容も、依頼人も言ってないのだから反してはいないのだろうけど)
美織は笑顔のままで、柴田には例え訴訟になっても頼むもんかと心に誓っていた。