この溺愛にはワケがある!?
第三章
勢いあまってお泊まりした隆政は、翌日の朝、慌てて自宅マンションに帰る準備を始める。
航空券やその他諸々の出張の荷物が置きっぱなしだったからだ。
今回の出張は国内(東京)で、二泊三日の予定である。
飛行機一便の時間は朝十時。
当然ゆっくり朝御飯を食べる時間はない。
空港で簡単に済ませるという彼に、美織はささっとおにぎりを作って持たせることにした。
食べやすいサイズで二つ、ラップに包んで紙袋に入れる。
さすがにやり過ぎだろうか……とは思ったが普段の習性は直らない。
出来るだけお金を使わないで生きていく、という祖母の教えは健在だ。
玄関先で手渡された紙袋を不思議そうに見つめていた隆政は、中身がわかると破顔した。
「ありがとう!搭乗する前に一度連絡するよ」
「うん、行ってらっしゃい。気をつけてー」
「……いいな」
「へ?」
「行ってらっしゃい……って。あーもう、出張行きたくねぇ!」
隆政は玄関先にも関わらずぎゅうぎゅう美織を抱き締める。
「ぐぇ……」
と、可愛くない声を出した美織の口を塞ぎ、何度も何度もキスを繰り返した。
「…っ……ん……時間は?」
隙を見つけて声を絞りだしやっとの思いで息をする。
だが隆政はきつく絡めた腕を離そうとはしなかった。
それどころか耳元に唇を近づけ、おもいきり耳たぶに噛みついたりする。
(このままじゃ、第二ラウンドに突入………いや、出張に遅れてしまうっ)
「こらっ!隆政さん!仕事ですよ!しゃんとして下さいっ!!」
美織はゴツい胸板をドンッと叩き、腕の中でじたばたしてみた。
すると漸く諦めた隆政は腕の力を弛め不満そうな声を上げる。
「くそうっ!……待ってろよ……すぐに帰ってきて続きをするからな」
「………ちゃんとお仕事しましょう」
冷静な美織の声に隆政も冷静さを取り戻した。
デレッとしていた顔が嘘のようにキリリとしたかと思うと、真っ黒のロングコートを翻し颯爽と敷居を跨いだ。
「じゃ、行ってくる」
「う、うん、気をつけて……」
フワリと微笑みピンと姿勢を正して歩く後ろ姿を、美織は暫くボーッと見つめていた。
不覚にも……美織は見惚れてしまったのだ。
(た……隆政さんって……あんなに格好良かった??あれ?あれれ?さっきの、誰?……え、隆政さんよね!?)
玄関にはもうその姿はないというのに、まだ残像が目の裏に焼き付いている。
これまで美織は隆政をイケメンだとは思っていたが、好みではないなとも思っていた。
好みの度合いから言えばダントツに行政だったのだ。
その声の良さに覆い隠されていたのか、または。
美織の心境の変化か……。
「っくしゅん!!」
美織はくしゃみで我に返った。
十二月中旬である。
寒いに決まっている。
心境の変化がどうこう言う前に風邪をひいてしまう。
と、美織はさっさと玄関を閉めた。
航空券やその他諸々の出張の荷物が置きっぱなしだったからだ。
今回の出張は国内(東京)で、二泊三日の予定である。
飛行機一便の時間は朝十時。
当然ゆっくり朝御飯を食べる時間はない。
空港で簡単に済ませるという彼に、美織はささっとおにぎりを作って持たせることにした。
食べやすいサイズで二つ、ラップに包んで紙袋に入れる。
さすがにやり過ぎだろうか……とは思ったが普段の習性は直らない。
出来るだけお金を使わないで生きていく、という祖母の教えは健在だ。
玄関先で手渡された紙袋を不思議そうに見つめていた隆政は、中身がわかると破顔した。
「ありがとう!搭乗する前に一度連絡するよ」
「うん、行ってらっしゃい。気をつけてー」
「……いいな」
「へ?」
「行ってらっしゃい……って。あーもう、出張行きたくねぇ!」
隆政は玄関先にも関わらずぎゅうぎゅう美織を抱き締める。
「ぐぇ……」
と、可愛くない声を出した美織の口を塞ぎ、何度も何度もキスを繰り返した。
「…っ……ん……時間は?」
隙を見つけて声を絞りだしやっとの思いで息をする。
だが隆政はきつく絡めた腕を離そうとはしなかった。
それどころか耳元に唇を近づけ、おもいきり耳たぶに噛みついたりする。
(このままじゃ、第二ラウンドに突入………いや、出張に遅れてしまうっ)
「こらっ!隆政さん!仕事ですよ!しゃんとして下さいっ!!」
美織はゴツい胸板をドンッと叩き、腕の中でじたばたしてみた。
すると漸く諦めた隆政は腕の力を弛め不満そうな声を上げる。
「くそうっ!……待ってろよ……すぐに帰ってきて続きをするからな」
「………ちゃんとお仕事しましょう」
冷静な美織の声に隆政も冷静さを取り戻した。
デレッとしていた顔が嘘のようにキリリとしたかと思うと、真っ黒のロングコートを翻し颯爽と敷居を跨いだ。
「じゃ、行ってくる」
「う、うん、気をつけて……」
フワリと微笑みピンと姿勢を正して歩く後ろ姿を、美織は暫くボーッと見つめていた。
不覚にも……美織は見惚れてしまったのだ。
(た……隆政さんって……あんなに格好良かった??あれ?あれれ?さっきの、誰?……え、隆政さんよね!?)
玄関にはもうその姿はないというのに、まだ残像が目の裏に焼き付いている。
これまで美織は隆政をイケメンだとは思っていたが、好みではないなとも思っていた。
好みの度合いから言えばダントツに行政だったのだ。
その声の良さに覆い隠されていたのか、または。
美織の心境の変化か……。
「っくしゅん!!」
美織はくしゃみで我に返った。
十二月中旬である。
寒いに決まっている。
心境の変化がどうこう言う前に風邪をひいてしまう。
と、美織はさっさと玄関を閉めた。